湯たんぽで低温火傷になる


細なきっかけから大きな水ぶくれができて、皮膚科で切除することに。

原因

十年以上前に母が買った金属製の萬年トタン湯たんぽは、二年前の結婚時に貰い受けたもの。私の冷えた足元を、夜も昼も温めてくれていました。今季の使い始め、内部のサビが気になるようになり(残り湯を再利用できなくなり)、中でガサガサと大きな破片が動く音がし始め、そろそろ引退?次はどんな湯たんぽを買おうかしらと思っていたところです。

ある日、たぶん2月20日の夜。なんだかとっても疲れて、いつもよりも早めに眠ることにしました。今思うと、眠気でぼうっとして、真っ赤なコールテンの湯たんぽカバーの上に巻く、タオルの巻き方がおざなりだったのだと思いあたります。

水膨れ

朝起きると、右足のふくらはぎの辺りがジンジンする。なんでだろ?と思って、見るとキスマークみたいな跡ができていて、熱を持っている。「これが噂の湯たんぽヤケド!?まさか2年も愛用している私にそんなことあるはずない」と半信半疑ながらも、少しのあいだ保冷剤を軽くあててみたり流水にあててみたりして、その後は放置してみます。夜になって気がつくと、ぷっくりとした水脹れの出来上がり。完全にヤケドです。大きさは直径2㎝程で、5㎜ぐらい盛り上がって、私にとっては今まで見たことないほどの大きな水脹れなのだけれど、検索してみると、よくあることみたい。

水脹れが破れないよう、綿布にローズヒップオイルを塗ったものを当てて保護。手当て用のテープではかぶれてしまったので、マスキングテープを使います。通っている鍼灸の先生に「冷やすために水を溜めているんやね。2~3日で自然に破れるよ」と云われ、なるほどそうかと思い、水脹れを大切にしていました。3日を過ぎても破れないことを先生に伝えると「アイスピックで穴を開けなさいな」と冗談が返ってきて、5日目の朝、眠っている間に足同士をぶつけたのか、水脹れは破れてぺしゃんこに。

アロエ

実家に居た頃は、『ヤケドしたらすぐにアロエ』これでいつでも解決できたのです。ひどい日焼けをした時も、アロエで万事OKでした。だけど家にはアロエがない。図書館で借りている薬用ハーブ完全図解ガイドには、やはり「アロエは傷にも対応する」と書いてある。やっぱりアロエが一番なんだなと思い、急いで近所を歩き回り、広場で野放しにされているキダチアロエをひとちぎりして持ち帰りました。

葉を裂いて患部に乗せると、たいへん気持ちが好い。これは効きそう。ということで、朝晩アロエを取り替えながら2~3日を過ごします。実家のアロエはキダチアロエで、今回もキダチアロエなのだけれど、本などで見る効能のあるアロエといえば、アロエベラですよね。アロエベラなんて、そうそうないよなぁと思いながら歩いていたら、家のすぐ近くの駐車場に生えているのです。それを一本いただいて、キダチアロエと同様に扱おうとすると、ゼリーの部分がすごくドロドロ。葉に厚みがあるぶんゼリー部分も厚みがあり、うまく患部に貼れない。それに、貼っても気持ちよくない。ヤケドしていない通常の肌部分に裂いた葉が当たってかぶれている様子もあったので、アロエは中止しました。

*アロエの処置は本来、葉部を取り除き、ゼリー部のみを使用するようです。

自然治癒?

湿潤療法はどうかなと思って、ガーゼの上からラップを巻いてみましたが、なんだか気持ち悪くなったし、痒くなったので、やめました。それからしばらく、何もつけていない清潔なガーゼのみで過ごすことに。水脹れが破れた内側がだんだん黒くなってきます。かさぶたのようにも見えます。周囲直径10センチ程度の肌が赤くなっているのを見て、主人は「炎症やな」と言う。姉に写メールを送って見てもらうと「化膿してる」「最悪、壊死して足切断ってこともあるよ」と言うので、まさかまさかと笑っていました。お風呂に入っても痛くないので、しばらく湯上りにガーゼを貼るだけで放置していると、3月8日の夜、眠る時にズキズキと鈍く痛んで寝つけなくなり、私よりも病院嫌いな主人が「病院行ったほうがいい」と言うぐらい見た目が痛そうになっています。

悪化

3月10日、実家へ帰省する日の午前中に病院行きを決意。その前に「これこれこういう理由で実家に着くの遅くなるね」と母に電話で伝えると、母は「ドルマイシン塗っとけば治るんちゃうかな」って言うものだから、「そうやんなぁ。ヤケドで病院って、おおげさよなぁ」と思い直し、堺の実家へ直行したのです。父と母にヤケドを見せると、二人とも「こりゃ病院行かなあかんわ」ですって。とりあえず実家で過ごす2泊3日の間、キズパワーパッドで乗り切ろうと、奮発して買いましたが、中の説明書に「化膿している傷には使わない」と書いてあるので、使えないのです。

皮膚科へ

昨年夏に背中のひどい肌荒れで、藤井寺駅近くの葭矢皮膚科医院で一度お世話になりましたが、話を聞いて処方を出すだけの処方仲介診察だったので、其処へは行きたくありません。別の皮膚科をネットで探します。3月12日夕方、藤井寺駅近くにある形成外科/皮膚科久志本クリニックへ向かいます。この皮膚科を選んだ理由は、先生の経歴に信頼の予感があったからです。水曜日の午後診は、久志本先生が往診で不在のために別の先生で、その先生がとられた処置は、壊死部分を薬で溶かす方法。黒くなっている部分が壊死しているところで「薬の浸透を早くするために壊死部分を注射針で傷をつける」という説明を受けた上、患部を針で何度も押さえられます。結構痛い。

軟膏

処方されたのはプロスタンディン軟膏0.003%という壊死部分に塗るお薬と、リドメックスコーワ軟膏0.3%という周囲の炎症やかぶれの部分に塗るお薬。一週間後にまた来てくださいとのこと。お風呂には普通に入れるそうなので、それから朝晩毎日、綿棒でお薬をぬりぬりして、ガーゼを被せて過ごしました。画期的な変化はみられなかったものの鈍いズキズキは消えました。時々「いたたっ」と言いたくなるようなピリピリした別の痛みが発生。針で傷をつけたところが痛む感じです。黒かったところが黄色っぽい膿のようになっています。

切除

3月19日、二度目の病院へ。院長の久志本先生がいらっしゃる時間に行き診察を受けると、院長先生は「壊死している部分を取り除くしかない。場合によっては植皮になる。頻繁に通えないから塗り薬になってるけど、塗り薬じゃ治らない」と仰ります。一週間後に来るよう言われたのであり、頻繁に通えないわけではないことを伝えると、先生は「じゃ、今からやりますか?」とあっさり言って下さるので、私は勢いで「お願いします」と答えたのです。

寝台に仰向けに寝転んで、施術開始。患部周辺の3箇所程に(痛い)麻酔注射。寝ているので足元が見えなかったけれど、ハサミを使って壊死箇所を取り除いている様子。「あー深いなぁ。こりゃ脂肪まできてるなぁ」と独りごちる先生の手は動き続けています。血が出ているようです。助手の看護士さんは中年の女性で、私が手に汗握っていると「大丈夫、痛くないですよ」とあたたかく微笑んでくれるので、見えない不安は癒されたのですが、本当は、麻酔をしているのに、痛かった。施術中、私は先生にいくつか質問しています。その答えは以下に。

・壊死が広がって腐ってゆくようなことは無い。
・壊死を放置していると、そのままその部分の皮膚が再生されること無い。
・取り除いて凹んだ皮膚は再生する。
・ただし、肌が完全に綺麗な状態に戻ることは無い。
・治るまでに私の場合4ヵ月はかかる。

施術後の患部は包帯などで巻いてあって、水濡れ厳禁です。次回までそのままでいるようにとの処置なので、術後の患部が確認できず残念。前回(別の先生が)処方した塗り薬はもう使わないようにとのこと。お会計の際に「痛み止めをお出しした方がよいですか」と訊ねられ、そんなに痛むのですか」と逆に問うてしまいましたが、昨年末の衝突転倒事故で打撲したときに貰った痛み止めのロキソがあることを思い出し、痛み止めのお薬はお断りします。すると先ほどの助手の看護士さんが来られて「出血が流れるほど止まらなくなったり、我慢できない痛みがあったらいつでも電話してね」と一声。えっ!そんなに大変なことになるの?なんだか急に病人になった気分。

次回は3月22日に予約を取り、最後にまた受付の女性から「なにかあったら電話下さいね」と優しく声を掛けて下さったので、私はおののきながらも、古い小学校のようなクリニックの扉を後にしたのです。その日の予定はキャンセル。ゆっくりヨタヨタの徒歩で帰ります。天気の好い真昼間に、のんびり歩く時間のあるしあわせ。


自分たちが経験して知ったことは、子どもたちに伝えられる。

私は低温火傷であろうと、自然治癒で乗り越えたいと思っていました。でも、現在広く病院で行われている治療法によって、私がどんなふうに治ってゆくのか、知りたいとも思っています。

後日、追って続きをお伝えします。



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