ブライワックスは、イギリス生まれの蜜蝋ワックス。ジャコビアンを買いました。
無垢材の着色や仕上げ、ワックス仕上げの木製品のメンテナンス等が主な用途です。このブライワックスを、合板に塗りたい場合はどうすれば良いのか。初めて使う試行錯誤の一部始終を今からお伝えします。少し長いですが、どうぞお付き合い下さい。
押入れの引き戸に
ターゲットは、押入れの引き戸。1981年に改築した我が家の二階はすべて、この木目調化粧合板で統一されています。化粧合板、プリント合板、天然木化粧合板。何て呼ぶのが正しいのか判らないけれど、ここでは化粧合板としておきます。天袋の引き戸(70㎝×45㎝)から始めますね。そのままでは浸透しない?
「化粧合板はそのままの状態だとワックスが浸透しない」という説が本当かどうか、試してみました。ヤスリがけをせずにワックスを塗ってみると、少し薄汚れる程度で、塗装することができません。化粧合板にワックスが浸透しないのは、本当でした。ヤスリの番手
最初に、120番の紙ヤスリを使って大まかに化粧(プリント)部分を落とします。この時に、60番などの低い番手を使うと深い傷ができやすく、後でその傷をならすのが面倒になります。次に 、240・400・600と番手を細くして、肌触りの良い表面に仕上げていきます。400番で仕上げてもOKですが、今回の場合は、600番をかけると木肌の手触りが格段に違いました。試しに600番と800番とで比べてみると、あまり差を感じなかったのです。小さな物の場合はその差が大事になってきますが、ここでは800番以上の繊細さは不要と判断しました。
もちろん使う番手は、お好みで大丈夫です。私が気に入っている紙ヤスリの番手は、60 / 120 / 240 / 400 / 600 / 800 / 1000 / 1500 / 2000番。
細かい木屑が舞うので、マスクを着用しましょう。ヤスリをかけて表面に溜まる木屑の粉は、いらない布やペーパーで拭き払いをしつつ作業します。(私は何十枚もストックしている祖父の染み付きハンカチを使用)
ヤスリをかける
ヤスリがけの基本は「木目方向」です。なのに私は最初の戸を「タテ → ヨコ → ナナメ → 反対ナナメ → タテ」の順でかけてしまい、仕上げ後にも深入りしたヨコキズを残してしまいました。2枚目の戸で「タテ → ちょっとナナメ → 反対向きのちょっとナナメ → タテ」というふうに「ヨコ」工程を省いてみると、時短にも仕上がりにも良いことがわかりました。ここでの「タテ」は木目に沿った方向のことです。お化粧を落としてみると、木肌の色が微妙に違っていたりする。これがまた面白い。ヤスリがけを終えた板は、木屑粉をていねいに払い、固く絞った布で拭き取ります。そして、表面の水分が乾いて消えるまで、しばらく待ちましょう。そうしてやっと、ブライワックスの蓋を開けることができるのです。
BRIWAXを塗る
缶を開けてまず驚くのが、臭いです。バイクのオイルと同じ臭いがします。カルナバの臭いではないはずですので、一体何の臭いでしょうか。慣れると平気で、気分も悪くなりません。私は下地塗装関係は省き、ヤスリをかけたベニヤ板に直塗ります。(暑さのためにワックスが液化)マスクを再び着用して、さあ、いきましょう。ブライワックスをガーゼや布に取り、塗りこんでいきます。ワックス自体はとても濃い色です。
ガーゼは塗りにくいです。木肌に引っかかり、すぐに破れてします。
台所用スポンジを使ってみると、スポンジのザラザラ面が木目の隙間に馴染みます。でもスポンジ部分にワックスが染み込むので、ワックスを浪費している気がします。このあとスポンジ部分を剥がして、ザラザラ面のみを使うことにしますが、もう少し効率の良い方法があればと思います。
ブライワックス スチール・ウールがあれば、もっとラクかもしれません。この専用スチールウールは、ヤスリ600番相当の効果があるのです。私の場合だと、ヤスリがけ4段階のうちの最後は、ワックスと共に仕上げることができるということです。
ブライワックスは20℃以上で液体化します。「融解した状態だと染み込みすぎる」と指摘している記事を見ましたが、私も「ワックスが液化してベニヤ板に染みこみやすくなり、ワックス消費量が上がっているのでは?」と確かに感じました。
試しに、ブライワックス缶を冷蔵庫で保管し、固化させた状態で塗ってみましたが、夏場の室温だとすぐに柔らかくなることと、塗装するときの摩擦熱で、個体感はほぼ感じられません。ですので、冷蔵庫で保管しなくても作業に差し支えないことが判リました。固化させることの唯一の利点は「スポンジに取りやすいこと」ぐらいかな。
さて、ワックスを塗り終えると、ただの古ぼけたベニヤ板に見えます。美しいとは言い難い。最初にこの塗り上がりを見た瞬間、とてもがっかりしました。ヤスリがけが下手すぎたのかもしれません。それに木肌の隙間にワックスが入り込まず、きちんと着色できていないような気もします。このあと数時間乾かしたてから重ね塗りをして、また乾燥させて。好みの濃さに調整します。
ブラシをかける
左の写真はブラシ前 / before、右はブラシ後 / afterです。乾燥後にブラシをかけると、この艶めき。手触りなんかもサラサラで、とても気持ち良く、印象はガラリと好転です。
ブラシがけのブラシは、亀の子タワシで代用できます。私もはじめはタワシを使いました。けれど、磨いてるうちに「このシャカシャカした手の動き、何かに似てる‥」という気持ちがよぎり、気付いたのです。これは「靴磨きの要領」です。そういえばブライワックスの臭いは、どことなくKIWIの靴墨の臭いに似ています。愛用している靴用ブラシを使ってみると、ブラシのかけやすさが抜群。夢中になってしまいます。
作業を終えて
そんなこんなで、何日もかかって、天袋の引き戸4枚を、なんとか完成させました。70㎝×45㎝のベニヤ4枚分(2度塗り)で 使用したブライワックスの量は 19.5g。磨き上げた艶は、光を反射した時に艶きますが、第一印象は暗い感じがしますので、好き嫌いが分かれると思います。私は好きです。その後、大きな引き戸の左2枚を仕上げました。右下2枚は化粧合板のままです。この押入れがある部屋は作業部屋なので、急がなくても大丈夫なんです。早くて7年後には取り壊されるかもしれないこの家に、今時間をかけて何かしたところで、何が残るのだろうと考えます。だったらこれはムダなことなの?時間の浪費?と思うこともありますが、人にはいつか必ず死が訪れ、自分が大事にしているものには何の意味もなくなるのです。だからって何もせずに生きるわけにはいかないし、何かしたいと願うことは、不思議ですね。生まれてから死ぬまでのその束の間に、皆何かの為に動き動かされ、輝き共鳴する。何も成しえず死ぬことが無駄ではないように、いつか壊される家に手を掛けることも無駄じゃない。
化粧を落として現れた木の色や模様や肌触りは、今まで当たり障りの無い会話だけを交わしていた人の、本当の心に少し触れることができたような、胸の奥に響き続けるプリズムの音が聴こえるような、満ち足りた充実感を私に与えてくれたのです。
おわりに
同じBRIWAX社製のワックスでも「オリジナル」という元祖のワックスと「トルエンフリー」とを分けて製品化していることから、オリジナルの方にはトルエンが含まれていることが判ります。トルエンとは、主に油性塗料に含まれている揮発性の液体で、人体に悪影響があり、長期吸入した場合は脳障害を負うことが確認されています。私は室内で使用することが多いため、トルエンフリーを選んで正解でした。BRIWAXの主成分は、蜜蝋(動物性)に、カルナバ蝋(植物性)を加えたものです。全成分表記は不明。可燃性なので火気厳禁です。塗装に使用した布は、水で湿らせてから捨てましょう。作業をするときは、マスクと前掛けの着用を忘れずに。
ブライワックス・トルエンフリー全6色(Amazon)
→ ジャコビアン / Jacobean
→ アンティーク・ブラウン / Antique Brown
→ ミディアム・ブラウン / Medium Brown
→ ラスティック・パイン / Rustic Pine
→ オールド・パイン / Old Pine
→ クリヤー / clear
お値段は370mlで2800円前後です。アマゾンや楽天を比較しても、私が出会ったホームセンター「ホームズ」でも、ほぼ同じ価格で販売されています。
イギリス本国公式サイトの商品ページ
→ http://www.briwax.com/briwaxtfpp.htm
BRIWAX 日本正規サイト総代理店
→ GALLUP/ギャラップ
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