魔女の宅急便「キキの恋」


私はあれからずっと、魔女の宅急便シリーズを、少しずつ読み進めています。

『その3』では大涙しましたが、今日は『その4・キキの恋』の紹介です。

コリコの町で仕事を始めて17歳になったキキは、順調に仕事が入る一方、思春期の自意識に振り回され、真っ暗闇の底で、一人きりで答えを見つけることや、友人や、繋がりのある人のあたたかな心から教わることや、恋する人への喜怒哀楽から、大切なことを学んだりするお話です。

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それから三日後、見習い仕事をおわったモリさんがヤアくんをむかえにきました。「キキ、ほんとうにありがとう。大助かり。わたしはおかげさまでとってもいい経験したわ。あのお店ね。手紙に書いたようにあまりお金をつかってないの、でも頭はつかってるのよね。それに心もね。それがわかるからわかい女の子に人気なんだわ。わたしも気が楽になったわ。お店をひらくなんておおげさに考えなくたっていいのよ。こっちにおもしろいお店にしたいって気持ちと工夫があればね‥‥わたしやるわよ。自信持っちゃった」

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モリさんというのは、キキの友人の女の子です。モリさんの夢は山の中でホテルを営むこと。そんなモリさんが二人きりの家族である弟のヤアくんをキキに預けて、近ごろ評判の(23歳の女性が経営する)レストランへ、一ヵ月の修行に出たのです。モリさんがそこから学んだことを、キキへの手紙に綴った言葉はキキの心を通して、読み手へのメッセージとして与えられます。



真っ暗闇の底で一人きりで答えを見つけるのは、ヤアくんが帰った後のこと。同年代のおともだちと遊ぶことに夢中になって、文字通り自分を見失ったキキは、無我夢中で夜の山の中をさ迷い、ついに一人きりになってしまったとき、自分にとって大切なものを見つけるのです。そのシーンは、大人である私たちが読んでいても、憶えのある、思い出すだけで胸が苦しくなる、自分の行動に打ちのめされた時のあの感じ。なんにも見えない真っ暗闇の中でひとり、うずくまって泣いている小さな自分。そんなとき、キキは何を見つけたのか?

ふつう、人は、親しいあいだがらの友人であっても、「そういうときに、どんなふうにしてキラメキを掴んだか」なんて話を、あまり口に出しません。言葉にすると消えてしまう魔法のように、大事に胸のうちに仕舞っておくものだけれど、キキは、このお話の中で、それを教えてくれるのです。



映画『魔女の宅急便』と、角野栄子さんの原作『魔女の宅急便』を比べてしまうと、もちろん細かい内容は違うけれど、もしかすると宮崎監督は、映画をきっかけとして、その後成長してゆく一人の女の子の物語を描いたこの本の世界を、もっと広めたいと願ったのかも。

ミヒャエル・エンデの『モモ』や『はてしない物語』が好きという人には、ちょっと現代風な内容ですが、ぜひ一度読んでみてほしいな。私にとって、日本の現代作家のファンタジーは、梨木香歩さん以来です。角野栄子さん。ありがとう。


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